山本文緒『なぎさ』


山本文緒さんの『なぎさ』を読んでみました。

本全体にまとまりない、と言ったらそれまでだけど、まとまって
なくていい、本なのかな。もやもやは残るものの考えさせられる
作品でした。

あらすじは、家事だけが取り柄の主婦・冬乃と、会社員の佐々井。
同窓生夫婦二人は故郷長野を飛び出し、久里浜で静かに暮らして
いた。佐々井は毎日妻の作る弁当を食べながら、出社せず釣り三
昧。佐々井の会社の後輩、元芸人志望、何をやっても中途半端な
川崎は、自分たちの勤め先がブラック企業だと気づいていた。
そんな夫と川崎に黙々と弁当を作っていた冬乃だったが、元漫画
家の妹・菫が転がり込んできて、一緒に「なぎさカフェ」を始め
ることになった。姉妹が開店準備に忙殺されるうち、佐々井と川
崎の身にはそれぞれ大変なことが起こっていく。
 
         

感想です。時を経て、同じ部屋で過ごすようになった姉妹。しかし
すでにそこには夫もいた。静かだった生活にさざなみが立ち、やが
て大きなうねりになる。しかし冬乃は変化を求めていた。そんな感
じで始まったので期待してしまった。でもそんな「うねり」もドラ
マチックさもなく、たださざなみが続く。さざなみが続きすぎて逆
にドキドキする。この張りつめた感じは嫌いじゃない。

登場人物はみな事情と鬱屈を抱えながら、巻き込んだり巻き込まれ
たりしながら生きている。負を切り捨てるのか、やり過ごしていく
のか。「人生をやり過ごす」ことは生きるヒントになる、この本を
読んでそう思いました。

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誉田哲也『増山超能力師事務所』


誉田哲也さんの『増山超能力師事務所』を読んでみました。

誉田作風のさすがのバラエティさにうなりました。お気楽なエン
ターテインメント作品。

あらすじは、世の中に超能力が一般的に認められ始めた世界が舞
台。その力を活かし探偵業を行っている増山超能力師事務所。
浮気調査、家出人探し、超能力で解決いたします。そんな感じ。

      

感想です。最初は軽く、面白く読ませているのに、少しずつ重さ
を加えていく。読みながら思ったのは、もしかして誉田さんは昨
今のコミュニケーションに問題を提起しているのかな(笑)
引用すると、「超能力師だかなんだか知らねえが人の心ってのは
な、読んだり覗いたりするもんじゃねえ……察するもんだ」、実
は超能力師を使ってこれが言いたいんじゃないか。まあ深読みし
すぎか。

もうひとつウケた文章を引用すると「超能力師の「師」が「士」
でないのは、「超能力士」だと最後が「力士」になってしまうた
め、お相撲さんみたいで嫌だという女性能力者の意見が多かった
らしい」だって。まさかのディテールにこだわりながらの女性視
点に爆笑しました。

今作は短編集からなるもので、キャラクター(超能力者)の自己
紹介的な内容だったので、これを次回以降どうやって展開してい
くのか、そこが見ものですね。心って察するもんですよ。


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三浦しをん『政と源』


三浦しをんさんの『政と源』を読んでみました。絶賛されている
方が多いんですけど、ウッソーって感じ。読み始めて、有川浩さ
んの『三匹のおっさん』が頭ん中チラチラして、それでもしをん
さんらしい笑いで読み切ったけど、なんかパンチがなかったぞ。
勝手にハードル上げすぎか?

あらすじは、つまみ簪職人の源二郎と元銀行員の国政は、ふたり
合わせて146歳の幼なじみ。弟子の徹平(元ヤン)と賑やかな生
活をおくる源二郎と、妻子と別居し男やもめの国政。ソリが合わ
ないはずなのに、なぜか良いコンビ。そんなふたりが巻き起こす、
ハチャメチャで痛快だけど、どこか心温まる人情物語。
 
    

感想です。元銀行員の型物と、やんちゃなつまみ簪職人のマイペー
スでながらが噛み合う凸凹コンビが笑えました。バリバリ働いてい
た男の退職後の寂しさや、老後だからわかる家族の大切さ。重くな
りがちな話なんだけど、そこはしをん節炸裂で笑いに変える。特に
ハガキの部分はほっこりと爆笑とホロリをいただきました。

ただやっぱりパンチに欠けました。やっつけ仕事で書いたのかと疑
っていたら読後に納得、この本って少女小説雑誌に掲載されていた
んですね。しをんが少女雑誌に投稿したらって本で、ぶっ飛びたい
人(ワタクシ)には物足りんです。次作に期待。


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伊東潤『巨鯨の海』


伊東潤さんの『巨鯨の海』を読みました。第149回直木賞候補作、
3回目の候補作入りだったのでそろそろの直木賞作家さんです。
この作品を読んで、全然関係ないけど捕鯨問題をググってしまっ
たぜ。

あらすじは、網を打つ者、とどめを刺す者、おのおのが技を繰り
出し集団で鯨に立ち向かう、世界でもまれな漁法「組織捕鯨」を
確立し繁栄した紀伊半島の漁村、太地。しかし、仲間との信頼関
係が崩れると即、死が待ち受ける危険な漁法であるため、村には
厳しい掟が存在した。流れ者。己の生き方に苦悩する者。異端者。
江戸から明治へ、共同体で繰り広げられる劇的な人生を描いた渾
身作。

     

感想です。時代小説という部分を除けば、ストレスを感じされな
い筆力。6つから成る短編集でありながら、すべてが違った面白
みを感じさせてくれる展開。短編ごとに時代背景が流れているの
で、「鯨組」の移ろい具合も面白かった。

捕鯨シーンの迫力、自然への畏怖、そして感謝。閉塞感に満ちた
村での出来事が、熱く、非常に熱く心に響きました。 この時代の
捕鯨ってのは商業捕鯨ではなく、文化だったんだな。人間より大
きなものに対して知恵をしぼり命がけで戦う。ひとつの巨大な命
を奪うことで、人が生きる糧を得ているということを真摯に受け
止める。時代小説なのに人にすすめたい、そんな本でした。

黎明に起つ、あっちは合わんかった。


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道尾秀介『鏡の花』


道尾秀介さんの『鏡の花』を読んでみました。

久しぶりに僕の中で道尾さんが躊躇いもなくじんわりと広がっ
て行く作品でした。そろそろ道尾さんを敬遠しようかと思って
いた矢先だったんで、喜びはひとしお。

あらすじは、少年が抱える切ない空想、曼珠沙華が語る夫の過
去。老夫婦に届いた 絵葉書の謎、少女が見る奇妙なサソリの夢、
姉弟の哀しみを知る月の兎、 製鏡所の娘が願う亡き人との再会。
ほんの小さな行為で、世界は変わってしまった。 6つのパラレル
ワールドが呼応し合い、眩しく美しい光を放つ。
 
          

あらすじだけだとよくわからないとけど、似ているけれど同じで
ない6つの世界で、誰かが足りない。キャラクターや設定はほぼ同
じなのに、誰かが足りない。家族の誰かが欠けたら、欠ける時、
家族はどうなってしまうのか。それぞれの話の展開力に道尾秀介の
凄さを感じました。直木賞受賞以前から鼻につくようになった凝り
すぎた描写がスッキリしてたのも良かった。

強いて難を言えば、「死」が重いかな。もっと違う切り口だったら
と思うけど、「死」は「生」でもあるよね。


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富樫倫太郎『生活安全課0係 ファイヤーボール』


富樫倫太郎さんの『生活安全課0係 ファイヤーボール』を読ん
でみました。軍配者シリーズの富樫さんかと期待して読みまし
た。エンタメ風読み物としては有りですが…。

あらすじは、所轄の窓際部署にやってきたキャリア警察官・
小早川冬彦。マイペースな変人だが心の裏を読み取るスペシャ
リストだった。 「のぞき」「徘徊老人」「迷子」「不登校」
そして「連続放火」までお荷物キャリア刑事が隠された心理か
ら謎を解決していく。
 
              

感想です。キャラ設定があからさまでアニメみたいな話。最初
っからシリーズ化を考えてますよね。次作は「生活安全課0係
スピードスター」みたいな感じで。とは言いつつ、最後まで読
んでしまった。エンタメ好きにはいいのかも。

振り幅の大きさには敬服するけど、富樫さんに軍配者シリーズ
から入ったワタクシにはイメージが邪魔してちょっと厳しい作
品でした。


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垣根涼介『光秀の定理』


垣根涼介さんの『光秀の定理』を読んでみました。

垣根さん、今度はそっちに行ったか。新境地となるテーマは
歴史もの。しかも明智光秀。歴史小説は諸説あってこそ。多
くの本で名脇役の光秀を、歴史小説を書いていなかった作家
がどう書くか。歴史に新しい風を吹き込んだ、というのは大
袈裟だけど垣根涼介自身には新しい風が吹いたんじゃないで
しょうか。

あらすじは、永禄3年、京の街角で三人の男が出会った。食い
詰めた兵法者・新九郎。辻博打を生業とする謎の坊主・愚息。
そして名家の出ながら落魄し、その再起を図ろうとする明智
光秀。この小さな出逢いが、その後の歴史の大きな流れを形
作ってゆく。光秀はなぜ織田信長に破格の待遇で取り立てら
れ、瞬く間に軍団随一の武将となり得たのか。戦国の世に一
瞬の光芒を遺した男たちの軌跡を描く。

      

感想です。土岐明智家の嫡流としての血脈を背負い政争の舞
台へと突き進んでゆく光秀の生き方(定理)が、あの事件を
起こした。その解釈に明智光秀が大好きになってしまった。
不遇の時代から織田家で大躍進する光秀を、「友人」視点か
ら暖かく描くほっこり小説。

話は6章からなる。この本風に言えば、六つの椀のうち五つの
椀を開けたところまではすごく良かった。なのに、六つ目の
椀(最終章)を開けたら、本能寺の変のくだりがすっぽり抜け
て、二人の友人の回想という形で光秀が語られていた。そこの
あえて書かないところはいいと思った。ただ、数学的な話が結
果的に浮いてしまっていないかな?と読後むずむず。しかし
次作も期待大。


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東野圭吾『夢幻花』


東野圭吾さんの『 夢幻花 』を読んでみた。久しぶりの東野さん。
どっぷり東野さんらしい作品で、切なさと目新しさはないけど
「安定」でした。

あらすじは、独り暮らしの祖父・秋山周治が殺された。第一発見
者の秋山梨乃は、数日前に周治が見せてくれた黄色い花の鉢植え
が消えていることに気付く。黄色い花のことが気になり、思い切
ってブログに花の写真をアップしたところ、蒲生要介と名のる男
に「あの花には関わらないほうがいい」と忠告される。しかし、
気になった梨乃は、偶然に出会った要介の弟・蒼太と祖父の死の
真相と黄色い花の謎に向けて調べ始める。


       

感想です。ある熱いメッセージを伝えたくて、このミステリーを
書き上げたのかな。僕たちの生きる道には「負の遺産」がある。
それを厄介ものと捉えるのか、前向きに付き合っていくのか。

読み飽きさせないテクニック、説教の匂いを微塵もさせないメッ
セージ、無駄のない文章、まさに心にストン。多くの伏線がパズル
のピースのようにはまっていく終盤はお見事としか思えない。
 
少々ネタバレだけど、無駄に話をこじらせすぎてないか、そのミ
スリード(ってかミスリード以前の問題で混乱して頭が全然整理
できんかったけど)必要だったのか?と穿ってはみても、そりゃ
最後まで謎が解けなかった自分の推理力に対する八つ当たりって
やつでしょう。さわやかな読後感ありがとうございました。

これはこれで有りです、次は切なさと重いのをお願いします。


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伊坂幸太郎『死神の浮力』


伊坂幸太郎さんの『 死神の浮力 』を読んでみました。

まず言いたい。憎いのは犯人ではなく、文章を混乱させるキミだ!

あらすじは、一年前、一人の少女が殺された。犯人として逮捕さ
れたのは近所に住む二十七歳の男性、本城崇。彼は証拠不十分に
より一審で無罪判決を受けるが、被害者の両親・山野辺夫婦は本
城が犯人だということを知っていた。人生をかけて娘の仇を討つ
決心をした山野辺夫婦の前に、「死神の精度」で登場した死神の
千葉が現れる。



感想です。正直言って、愛娘が殺された復讐劇という設定が笑い
にくい。笑いたいのに切なさが邪魔をする。もっとスカッと笑い
たいのに簡単には笑わせてくれない作品だ。

設定だけじゃなく、伏線もさりげなさすぎて、伏線を再確認する
のに手間取って本に集中できなかったのは僕の読解力と集中力の
問題か。エア地団駄を踏んでしまったのは事実で最初から2回読
むつもりで読んだほうがいいかも。

読んでいて、パスカルや渡辺一夫、父親 の言葉を借りたメッセー
ジ色が強く、それぶん面白みが隠れてしまっているような感じが
しました。 こんな面倒臭い文章を書くなんて伊坂さんは敬意を払
ってもらいたいに違いないな。

傘を折りたたんだ後に出てくる牧田さん、なんか気になる。


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佐々涼子『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』


佐々涼子さんの『エンジェルフライト国際霊柩送還士』を読みました。

本の内容は、外国で亡くなった日本人を遺族の元へ帰し、日本で亡くな
った外国人を遺族の元に送る国際霊柩送還士という職業のノンフィクシ
ョン。

     

こういう仕事があるんだ、と知るいいきっかけになりました。遺体と言
っても「人としての尊厳」があるんだと思い知ったし、自分もご遺体に
対してもっと真摯な態度で応じないといけない、そんな思いに至る作品
でした。

ただ本としては残念すぎる。取材が難しいのはわかるけど偏りを感じて
しまう。視点がこっち側ばっかであっち側が少ないからかな。国際霊柩
送還士というものを説明ではなく、実例からその存在意義を浮かび上が
らせてほしかった。これだけの仕事なんだから取材者の所感なんていら
んのです。結果的に書き手が邪魔しちゃってる感じがして、本としては
やっぱ残念。ただエアハースを取り扱った題材だけでも十分に読む価値
はあると思います。


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